安田イズム

07 分度生活【ブンドセイカツ】

「如何なる事情のある時にも
天災地変や
病苦災難を想定した
準備を自らに課すことが、
安固な人生を送るための
有形無形の
財産を
築くことにつながる」
という考え方である。

企業にとってリスクマネジメントは安定した経営と事業の
成長を図るための重要な課題の一つだが、
善次郎翁はまず個人の生活においてこれを実践することで
経営者たる自分自身の礎を固めた。
その方法は危機事態への対処よりも「予防」に焦点を当てたもので、
明治の時代においてすでに翁が、
現代的なリスクマネジメントの本質を捉えていたことがわかる。

まずは己の力量を計れ

個人生活におけるリスクマネジメント法として、善次郎翁は「健康管理」と「収入からの一定割合の貯蓄」の2点を大きく取り上げている。そしてこれらの実行においてまず必要なことは「自分の力量を計ること」だとし、次のように述べている。

「たとえば百里の道を十日で行き着こうと思うなら、自分の体格を人の体格とよく比べ、人よりも勝っている点と劣っている点とを吟味し、その上で一日に進む里数を体力に合わせ段々と伸ばしていくのが間違いのないやり方だ。ところが多くの人は己の力に対する自惚れと目的地へ急ぐ焦りのために、最初に飛ばして十三里も十四里も進もうとするから途中で倒れてしまうのである。私の経験からいえば、大半の人が悲境に陥り悲運を招く原因の一つは、その人が事に当たるに自分の力を計らず、順序も考えず、ただ闇雲に始めてしまうことにある。つまりほとんどの災いは、自らの行いが招く災いに他ならないのである」

安全で安心な未来のために

「備えあれば憂いなし」とはよく言うが、善次郎翁ほど徹底して危機管理に取り組んだ人物は少ないのではないだろうか。実際には翁自身も、安田商店経営時に泥棒に入られたり、両替商として購入した国債の元本割れが続いたりといった憂き目に何度か遭っている。

しかし、そんな時でさえも翁は「困った」とは思わなかった。即ちどんな逆境も翁にとっては想定内のことであって、それを乗り越えるに足るだけの準備と覚悟が常にあったからであろう。こうした翁の確固とした信念は、現在もなお当社の経営方針に脈々と息づいている。

「堅実かつ誠実にして王道を歩む」という理念のもと財務体質を強化してきた当社は、バブル崩壊、世界的金融危機などにより経済環境が変動した際にも安定した経営を続けてきた。今後も時代の潮流に流されることなく堅実な経営を行っていくことが、当社の発展に繋がると考えている。

安田イズム

安田財閥の創始者である安田善次郎翁の言葉を現代語に翻訳しながら、安田のDNAに流れる「安田イズム」をご紹介します。