安田イズム

06 躬行実践【キュウコウジッセン】

「どのような地位にあっても
労を厭わず職務に励み、
自ら実行することで勤労の真義を
得ること」である。

26歳で起業し、一代で財閥を築くに至った善次郎翁は「勤労の目的は地位の向上ではない。
勤労そのものを目的として苦心と丹誠を凝らす覚悟を持ってこそ、
堅実なる立身出世の基礎が出来上がるのだ」と説き、
この「勤労丹誠主義」を生涯に亘って貫いた。
また「勤」と「倹」は「車の両輪の如く相離るべからざる」と書き、
地位の向上によって安楽と贅沢に流れることを厳しく戒めている。

成功への道を閉ざす一攫千金思想

善次郎翁は「万人が必ず成功しうる出世術は、急がず焦らず、順序正しくこつこつと進むことである。そのためにはまず、我が身を固めて独立独歩の基礎を築かなければならない。成功を急ぐあまりに一攫千金思想に捕らわれる者には、この基礎がない。根本観念が定まっていないから失敗するのである」と説く。

では独立独歩の基礎とは何かといえば「その収入において全ての支出を計ることを原則として勤勉貯蓄することである。己の業務を勤勉して冗費を倹約する『勤倹』の精神で収支宜しきを得ることが、万人における出世の第一義なのである」。「勤」のみで「倹」がなければ、どれだけ働いても財を築くには至らない。「倹」のみで「勤」がなければ前途の発展は期待できない。つまり「勤」と「倹」が車の両輪となって初めて、出世道のスタート地点に立てるのである。

出世への好循環を呼ぶ考え方

「勤倹」を成功の第一義と定める善次郎翁はまた、せっかく出世の糸口を掴んだ者がその途上で道を外れてしまうことについて、こう記している。

「地位の進んだ者の悪い風習は、すぐに気位が高くなることである。出社時刻が遅くなり、些細な仕事も部下に命じて、それを横着とも思わずに肩書きの威厳だと喜んでいる。今日のように生存競争の激しい世界の表面に立って働かなければならない時代にこのような有様では、一身一家、ひいては国家の発展を期することなど到底できない。」ここで重要となるのが「躬行実践」の精神である。

勤労の目的を「良い待遇を得て身体を楽にするため」と考えず、勤労そのものと考える。すると自然に身体が動くようになり、働くことに楽しみを見出すようになる。働くことが楽しくなれば、地位の向上とともに増していく仕事の重要性にますます張り合いを持って奮起するようになる。

「こうして堅実主義、実力主義の根本観念が定まった者には、立身出世のためのさらなる道が開かれる」と翁は教示している。

安田イズム

安田財閥の創始者である安田善次郎翁の言葉を現代語に翻訳しながら、安田のDNAに流れる「安田イズム」をご紹介します。