其の壱「堅志力行」【ケンシリッコウ】 其の壱「堅志力行」【ケンシリッコウ】

収入の二分を貯蓄する

「収入の八分(80%)で生計を立て、二分(20%)は必ず貯蓄をしておく。収入の八分以上は一円も使わずに、私は必ずこれを貯蓄して来た。収入の二分を貯蓄するということは、ゆくゆくは大きいお金になるものと思わなくてはならぬ。
そして、これを固く守るということ。自分の立てた主義について、他人がなんと評そうが、如何なる誘惑が起ころうが、一歩も曲げぬ、譲らぬということが、何より大切なことである」と善次郎翁は伝えている。この「収入の80%で生計を立て、残りの20%は何があっても貯蓄する」ことは非常に簡単なことのようであるが、実際にやり始めるととても厳しいことがわかるだろう。

善次郎翁式酒の飲み方

善次郎翁は堅志力行を実行するのに必要な「克己力」を養う方法として、次のような話を紹介している。これは、生来無類の酒好きであった善次郎翁が、自らが独立営業を始めたときに5年間の禁酒の誓いを立てたときの話である。
「5年の期限が来て禁酒を解いた当時は2、3杯も飲むとすぐに酔ったが、だんだんと量が増えて少しの酒では酔わなくなっていく。このままではいけないと思い、またピタリと禁酒し、その後数ヶ月してまた飲み始めると、また最初は2、3杯で酔う。次第に量が増えるとまたピタリと止める。こういう飲み方をずっと続けてきたが、私には一向に苦痛でなかった。堅志力行を実行するに当っては、自ら実行しうる程度に標準を定め、その標準によってある期間を実行し、それが次第に習慣となって全く苦痛を感じぬようになれば、さらに第二歩に進んで標準を立てるというように、徐々に進んでいけば、終には何事といえども偉大なる堅志を養成しうるに至る」。
己に打ち勝つ強い意志を感じさせる逸話といえよう。


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