Interview

総合監修・設計:千葉 学

総合監修・設計:千葉 学
Manabu Chiba

TAKANAWA CUBE を
街に開くことで地域にとっての「コモン」に

プロジェクトのスタートは、高輪で自社所有地の有効活用を検討していた事業主より相談があり、何がこの敷地と街にとってベストかを考えた結果、周辺との関係性を重視し、低層の木造住宅を建物の基本構造といたしました。そこで、住む人と地域にとっての「コモン(共有空間)」を基本コンセプトとして計画し、2020年2月に高輪木造プロジェクトの1期目として竣工したのがTAKANAWA SITEでした。その後、TAKANAWA SITEの意思を継承しながら、本プロジェクトの2期目として計画したのが、TAKANAWA CUBEです。
高輪は都心に近く恵まれた立地で、まわりに高層マンションが立ち始めた一方、このエリアには低層住宅の下町的雰囲気が残っています。東京にはよくある風景であり、魅力的でもあるので、なるべく温存したいという思いがありました。
むかしの東京には、誰かの家の玄関先から別の家の裏庭に出て……というように延々と路地を歩くことができる面白さがありました。そのイメージから、1階には誰もが通り抜けできるようなピロティをつくりました。通常、集合住宅は住人以外の人が敷地内に入りにくくなっています。閉じるばかりで街との関わりを持とうとしない。しかしここではむしろゆるやかに開くことで、近所の人が駅へ向かう途中に通り抜けられたり、休日に散策できたりする雰囲気を目指しました。
TAKANAWACUBEは、それなりの規模をもつ集合住宅ですが、戸建て住宅が並んでいるような、親密さを感じさせるスケールを大事にしています。外壁は数種類の色を用いたパッチワークのようなデザインに。まわりにある木造2階建て住宅と混じり合うように、モルタル住宅の色調を引用しつつ、戸建に近いスケールで分節しました。建物の全体像がわからないようにして、街に紛れ込ませているのです。

TAKANAWA CUBE 外観パース
TAKANAWA CUBE 外観パース

強制されない
自然な触れ合いを

知らない人同士がたまたま同じ場所に暮らすのが集合住宅です。だから、廊下で顔を合わせた時に気まずい雰囲気になる空間には、したくありません。 “こんにちは”と自然に挨拶が出てくるくらいの緩やかなつながりは、高輪というブランドイメージの強い場所でも、きちんとつくった方がいいだろうと考えていました。
ただ、コミュニティは大事ですが、強制されるものでも演じるものでもないと思います。都市部では、やはり程よい距離感が大事。「仲良く暮らす」ことを前提に建築を造り込みすぎると逆に窮屈になり、住人は主体的に動かなくなってしまう。いろいろな場面でそれを感じてきたので、むしろ日常性の延長に関係が生まれるほうが健全ではないかと。
通常、エントランスから先は雨に濡れずに玄関まで行けるのが一般的ですが、 ここでは3階の廊下は屋根のない部分もつくりました。自分の住戸に着くまでの道のりを、街の延長として感じてほしいからです。また、廊下を玄関先として使ったり、3階に住む人同士が顔を合わせたりできるように計画しました。密集した地域なのであまり高密度にしたくないというのもあり、3階にはペントハウス的な趣をもたせています。立地としては高い場所にあるので、上からの眺めが良いんです。廊下を進むごとに目線があちこちの風景に抜け、街の中を練り歩くような感覚を味わえます。そのことで、街に住んでいる実感や地に足のついた感覚を得られることをねらっています。

TAKANAWA SITE(設計:千葉学建築計画事務所 / 2020.2竣工)
TAKANAWA SITE(設計:千葉学建築計画事務所 / 2020.2竣工)

住人が自由に
暮らしをつくれる余白

ほとんどの集合住宅では、みなが同じ方角ばかり見ながら暮らすわけですが、TAKANAWA CUBEでは住戸同士の視線が交錯します。それは、道路の向こうに他の家が見えるのと似た感覚であり、程よい距離があれば、幸せな風景のひとつになると思っています。あ、お隣さんが帰ってきたな、あ、お向かいはもう寝たな、という程度のことが伝わり、一緒に住んでいる感覚を得るのは、安心感をもたらしてくれるのではないでしょうか。
各住戸のプランニングで大切にしたのは、こちらが部屋の使いみちを規定せず、住む人が自由に決められること。住みこなしに関しては私たちより住み手の方がクリエイティブなので、主体的に関わっていける「余白」をつくるのが設計の仕事だと思います。
個々の住戸は、さまざまなかたちのユニットがお互いに絡み合うような複雑な構成で、その一つひとつがすべて形の異なる、多様な空間となっています。間仕切りの少ないワンルームが基本ですが、空間の〝くびれ〟でひとつの空間にざまざまな〝居場所〟をつくり出しています。この場所に対して住み手がクリエイティブに反応することで、生活に楽しさや膨らみがもたらされるのではないかと、期待しています。

Interview
総合監修・設計:
千葉学建築計画事務所
主宰 千葉 学 Manabu Chiba

建築家。東京大学大学院教授。 千葉学建築計画事務所主宰。 日本建築学会賞作品賞、吉岡賞、JIA新人賞など多数受賞。

1960年 東京都生まれ
1985年 東京大学工学部建築学科卒業
1987年 同大学大学院工学系研究科修士課程修了
1987年~1993年 日本設計勤務
1993年 ファクター・エヌ・アソシエイツ共同設立
2001年 千葉学建築計画事務所設立
2001年~2013年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授
2009年~2010年 スイス連邦工科大学(ETH)客員教授
2013年~ 東京大学大学院工学系研究科教授

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東急住宅リース株式会社

東急住宅リース株式会社

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